8年の歳月は彼女を蝕んでいったのだ。。。

保存船舶維持の難しさ

先日、出かけた茨城県ひたちなか市那珂湊港の教育実習船「常陽丸」の現状について。

漁業実習船「常陽丸」
竣工:昭和48年1月31日  臼杵造船所(大分)建造
全長:29.33m
総トン数:83.33t
現存地:茨城県ひたちなか市和田町3丁目地内 なぎさ中央公園
電話:029-263-7882
所有者:ひたちなか市
管理者:ひたちなか市
保存状態:陸上固定 スクリュー有り

【船歴】
本船は茨城県立那珂湊水産高等学校の漁業教育のため総工費8300万円を持って建造。
竣工以来、昭和61年3月まで高校生のべ3500名を乗せ近海や沿岸漁業の訓練に就航し、華やかかりし往時の漁業の一翼を担う技術者を育て上げる。
北は酒田・函館を基地とした「イカ吊り漁」、南は小笠原諸島を基地とする太平洋近海にて「鰹一本釣り漁」の実習を行った。
沢山の同窓生を初めとする関係者の努力により、120tクレーンで陸揚げ、昭和62年4月1日より一般公開され、すぐ脇の漁港:那珂湊港を今も優しく見守っている。

見学は、土日、祝日でそれ以外は団体5名で事前にひたちなか市水産課へ連絡が必要だと言うことだったのですが、最近は老朽のため危険だと言うことで、土日であっても事前連絡が必要なようです。
それでも保育園などで園児などが見に来ることもあるそうで、PUNIPさんと往くのにあいにくの平日だったのですが、保存船の研究をしているという旨を伝えて、見学を申し込みましたら、快く承諾頂きました。
この場合、直接、常陽丸を管理している常陽丸隣接の漁村センターさんのほうへ、市の方から連絡をして頂くようになります。この漁村センターさんは公民館なので、管理人さんがお忙しいこともあるようですから、こうした突然の訪問はタイミングが良くないと断られるかもしれないのにラッキーでした。
では、常陽丸の様子を8年前に保存船舶の御研究をされているN先生と御一緒したときの写真と比較してみようと想います。なお、8年前の写真は、N先生より頂いたものです。特にお断りしてないけど、笑って許して下さると想いますので先生ご勘弁。*1

まずは、外観。
こちらは8年前の姿。

そしてコチラが現状。
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遠景ではハッキリとした違いはないのですが、よく見るとブリッジのトップのアンテナ類が無いとか、マストのヤードステイが無いとか、錆が増えている感じがするとか、傷みが増えています。
船体そのものは、外観上の大きな傷みは感じません。
さて、次は上構を後ろ斜めから。
8年前。
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現状。

各所の傷みは、8年前に比べて拡がっているのがわかります。
ブリッジ周りの擬装品の状態はもはやかろうじて残っているような有様で、塗装はもはやその用を足していないように見受けられます。
舷側の手摺部分や緑色の張り出し(スカッパー?)の塗装の剥げ方、錆が増えているのもよく見るとわかります。
実物は、この写真の比ではないです。本当に酷い。
次は、船首楼からブリッジを見た画像。
8年前。

現状。8年前の画像と同じように見えるよう、2枚を合成したので、ちょっと繋ぎ目に違和感ありですが。

甲板のモルタル補修の拡がり方、手前のベンチレーターやダビッドの塗装の剥げ方、錆の進行、ブリッジ周りの擬装品の朽かたなど見て取れると想います。
恐らく、このまま放置すれば数年で上構からボロボロに崩れて、危険度が増して行き、ますます放置されるようになり、最後は解体の憂き目になることでしょう。

現在、この船は市の予算がほとんど廻っていないとのことで、かろうじて塗料などを支給してもらい、あとは、ボランティアの方のお力で補修やメンテナンスをされているのですが、いかんせん、関係者は皆、ご高齢に達しており、その維持には相当手をこまねいているご様子でした。
見学中も部品などについて、持って行ってもらいたいなどという、危ない発言も飛び出してしますほど、お手上げ的な話もありました。
隣接に、県立の高等水産学校もあるので、是非、生徒達などの力も活用すべきと想いますが、それは今のところ成されていないようです。

この常陽丸は関東以北では宮城の第16利丸までの保存船舶の空白を埋める唯一のものです。
小さく目立たない船ですが、なんとかその保存をしっかり守って行きたいものです。

本当にどうして往けばよいか、考えて行かねばなりません。

関係記事:
保存漁業実習船「常陽丸」 - PUNIP CRUISES(プニップ・クルーズ) - Yahoo!ブログ
大洗港の楽しい一日♪ - 縹渺舎

*1:mixiでも公開してます。