「レクイエム」J・ラター

「フォーレ、デュリュフレと同じ精神で作曲しました。」
作曲者自身の言葉通り、このレクイエムは誇大妄想的ドラマティック展開も無く、叙情溢れる美しい旋律と暖かさのこもる曲想をもって、聴く者に深い感動をもたらしてくれます。それにしても作曲年が何と1985年ということですが、全くコンテンポラリーミュージック的なところが少なくて、部分においては無調的な効果の部分もあるがこれはスパイス。同時代の吹奏楽曲でも感じられるネオ・ロマン派とでも言うべき、カッコイイ音楽・わかりやすいキャッチーな音楽の合唱版とでも言えばよいのか。そういえばあれだけ騒いだのにアンドリュー・ロイド・ウェッバーのレクイエムは随分と話題に乗らなくなったのですが、ほとんど同じ頃1984年の作品。皆さん、そろいにそろって父の死を意識して書いたのも面白いし、「怒りの日」の単独作曲を避けている点も共通です。もっとも、それぞれちゃんと個性を発揮していることも見逃せない点で単に類似点があると言うだけで個々の楽曲を下手に論じてしまうのは「やめましょう」、よく耳を澄まして各々の良さを研究するのがよろしいかと。ジョン・ラッターについてはコチラが詳しいので御参照のこと。

ジョン・ラター - Wikipedia

第1曲では冒頭低域で不気味に蠢く無調的な響き*1ではじまり沈鬱におしこまれたような終止を経るが、すぐに美しい優美な歌になり*2天国的な空気を漂わす。徐々に力を得て力強い盛り上がりをみせてから再び優美な旋律に戻るのだがここが素晴らしい清らかさで感動!この旋律は終曲でも歌われる。
第2曲はチェロの何とも悲しみ溢れるエレジーで始まり、本来のレクイエムからではなく詩編130番を用いてちょっと雰囲気が違う。黒人霊歌的響きを指摘される方もいるが頷ける。
第3曲はソプラノの輝くような珠玉の美しさで*3所々で聞こえるクリシェが感動的且つ恍惚的。きらきらとハープが美しい。
第4曲はチャーミング且つ華麗な賛歌。究めて短いがこれも感動!ちょっと現代曲らしいアレンジ。
第5曲アニュス・デイはやや規模が大きく沈鬱な気分が支配する神秘的音楽。アニュ・デイの旋律は短いアカペラを挟んで繰り返させれ巨大な音響伽藍を築きますが、フルートと合唱の応答を繰り返しつつ静かに幕を閉じる。
第6曲ではアニュス・デイの暗雲からまるで陽光が差し込むようにオーボエが物憂げで牧歌的な旋律を歌い出し、これにからみながら合唱が第2曲と同様に詩編23番を歌い出す。ここでも合唱とオーボエが相対して応答するのは、アニュス・デイの後半フルートとの掛け合いとシンメトリー対比させているようで誠に効果的。ここもきらきらとハープが美しい。
第7曲は第1曲を意識していることは明白で、冒頭は暗鬱にソプラノソロが「埋葬のサーヴィス」を英語で歌うが、そこへ合唱が加わり一区切り付けると、ハープと弦合奏のアルペジオに載せてソプラノが鳥肌が立つような悲しみを含む救済への歌*4を歌いだし少しずつ混声合唱が加わり星々の煌めくような空間を演出しつつ*5雄大に広がったとたん、第一曲の「ドナエイエス」旋律が回帰してここで「落涙」。そのまま優しく合唱が歌い上げると、曲はまるでふわりといきなり突然消えてしまう。
そして心にその響きと感動だけがいつまでも消えずに残るのです。


ラター:レクイエム/マニフィカト(ケンブリッジシンガーズ/ラター) - CSCD504 - NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー*6
CSCD504: RUTTER: Requiem / Magnificat
Cambridge Singers
City of London Sinfonia
John Rutter, conductor
Caroline Ashton, soprano / Donna Deam, soprano / Quentin Poole, oboe / Stephen Orton, cello

*1:ここは死を表す部分と感じられる。

*2:ここからレクイエムとしての本編と言えるか?

*3:ピエイエズは何方のものも素晴らしいでつ

*4:第3曲ピエ・イエズの変化形

*5:フォーレ「天国にて」を踏襲しているが模倣と言うことではなくこれはオマージュと呼ぶべきだろう

*6:15分間は無料で聴けるよ♪代表的作曲家からラターで検索ヨロシ