「ライチ光クラブ」 古屋兎丸 著 (東京グランギニョル)

あの世界をまた愉しめる恍惚

このブログでコレを記すことは多少ためらいがあるけど、やっぱり避けては通れない。
昨年の内に書いておこうと思ったが、年も明けたので書いておかねば気になって仕方がない。
だけど以降の文章は「けっこう気持ちが悪いかもしれない」し船にも音楽にも関係ないから読む勇気と好奇心のある方だけどうぞ。*1

伝説の演劇集団の中でも最も当時センセーショナルだったと思う「東京グランギニョル」
当時色々な人生経験の中でも、恐らく彼らの舞台を見て大きく影響された者としてはもう既に遠い記憶となってしまったが、「ライチ光クラブ」はやっぱり伝説的な舞台だったと記憶する。
ファシズムを彷彿とさせる学ラン姿の少年達の集団と、探照灯の強烈な煌めき、暗鬱な機械仕掛けのような不気味な舞台装置、少年愛を彷彿とさせる常川博行演じる独裁者ゼラと少年達の関わり合い、越ミハル演じる美少女マリン、そして怪優嶋田久作演じるロボット・ライチ。これらを飴屋法水が恐ろしく高密度にしかも精密に血糊飛び交う破壊と残虐の極限的表現に成功していた。

ゼラ率いる学生服姿の少年たちは、理想の世界を(それはまるで封権的なコミュニティ)掴むため夜な夜な廃工場跡に集い、強大な力を持つロボットを作り世界支配を目指している。そこでは、外界を小さなレンズを通してみているという比喩であろう潜望鏡人数分がさっと降りてきたり、突如轟音を立てて動き出し登場人物を運んだりするベルトコンベア、中国の楊貴妃が愛したと言われる「ライチ」の実と、それを動力とする製作中のロボット「ライチ」がいる。やがてライチは完成し、理想世界のために「美少女」を捕まえに行く使命を帯び、現実の街へと出撃してゆく。そして幾度かの失敗の上、遂に可憐なる美しい少女マリンを捕らえる。マリンは少年達に対し抗して眠ったふりを続けるが、少年達が引き揚げる時を狙ってマリンはライチと会話し、やがてライチは機械なりに人間の心を理解するようになり、マリンを愛の対象として意識するようになる。やがてマリンの扱いについて少年達に軋轢が生まれ、挙げ句に「燃料ライチ畑」が燃えてライチを使った世界征服は不可能となってしまう。そしてライチはマリンを解放すべく少年達を皆殺しに。。。。

雑誌エロティクスFで連載されていた古屋兎丸氏の漫画を2006年夏に一冊に纏めてついに刊行された。夢のような話だった。
327ページと読み応えたっぷり。かの飴屋法水にして作者は団員として認められたという傑作。読んでみて納得した。これはまさしく。。。。
当時の内容と若干違いはあるが、間違いなくこの本には「東京グランギニョル」が宿っていて、それを追体験して一時とはいえ演劇へ身を投じた一人の少年がいることも、確かだ。
更にそれが大きな人生へのターニングポイントになってしまったことだけは間違いなく、だから、やっぱりどうしてもここに記しておきたい事項なのである。

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

*2

*1:というほど凄くはないですけど。

*2:はらわたがちぎれて血しぶきがリアルに飛び散るので、そう言う者が苦手な方はお気を付け下さい。ちなみに私はリアルな血は平気?ですが、スプラッター映画とかバイオハザード系のゲームとか、とっても苦手で絶対見ないです。