差し迫るキャンパーダウン!

「トライオン提督の残せしもの」口絵

  


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誰の目に見ても衝突は免れるように見えなかった。
HMSヴィクトリアはゆっくりと左回頭をしてゆくが、僚艦キャンパーダウンはあまりにも近すぎた。
トライオン提督は突然デッキを横切って口元に両手を丸めてメガホンとすると、キャンパーダウンめがけて大きく叫んだ。
「後進するんだっ!後進だっ!!」
しかし、艦隊司令長官としては無意味な徒労であった。衝突など起こすことがあり得ない人物が、今や全く意味のない行動と声を嗄らしていた。
甲板上では防水マットを運んだは良いが、結局なすすべもなく退避する水兵が走り回っている。
徐々にゆっくりとキャンパーダウンの鋭い衝角は、確実に迫ってくる。
ヴィクトリアはもはや何の手だてをする事も出来ず、ただその柔らかな腹を食い破られるのを見守るしかなかったのだ。 

(新見志郎作「トライオンの残せしもの」より一部要約)

コミケ74にて頒布予定の同人誌「トライオンの残せしもの」(新見志郎著)にて描かせて頂いた口絵イラストです。
本文内容の一部はhttp://www.d3.dion.ne.jp/~ironclad/より「舷門>艦橋」で御覧になれます。
コミケにて是非お手に取って頂きたい一品です!

fismajrこと縹渺ミノル 拝