「海は碧いまま」

「骨」ではありがとうございました。おかげさまで初めて3000再生を突破、日刊ぼからんでも御紹介を賜りました!
試聴して頂いた方には、本当にお礼を申し上げます!

さて、時をおかずして新作を上げました。

この曲は下記のようなコンセプトストーリーに合わせてピアプロのコラボで作成中の3部作の第2曲に当たります。

そう遠くない「未来」。
膨れ上がった人類の人口は100億となり、経済格差が極端な状態になっていた。
地球は砂漠化が進行、ほんの一握りの人間を除く、その大部分はその日暮らしの貧しい生活を余儀なくされていた。
そのような時、突如地球温暖化が急速に進み、両極の大量の氷が一気に溶け出して海水が増え地球全体の平均海面は100m以上にも上がった。
低い平野はほぼ海となり、人間は宇宙か高地へと移り住むことを余儀なくされた。少しだけ残された大地は居住に適した部分は皆無。一部の上流階級の人間は既に構築されていた宇宙のスペースコロニーへと移り住む。
劣悪な環境の残された大地は貧しい人たちで溢れかえって、更に居住することを圧迫しスラムと化していた。

今、一人の素晴らしいプラチナブロンドのツインテールの少女が朽ち果てた電柱の上に座って海に静かに満たされた嘗ての東京の姿を眺めている。
彼女の刮目する風景の中、水中に没した都市は、高層ビルだけが顔を出しているが、そこに、もはやまともな人間は住んで居ず、一部の行き場のない人間が人としての自覚がないまま着の身着のまま動物のように細々と生きている。
大分日が傾いた洋上でかつての東京の繁栄の残映は虚無感に満ちていた。

少女は探していた。

彼女の主を。

彼女はユク。時音ユク。。

ユクは名もない老いた技術者が作り上げた「歌う等身大の人工有機生命体」Ultimate Vocaloidだった。
彼は青年の頃にVocaloid初音ミクで音楽を作ったことを思い出し、自らの科学力でユクを作り上げたのだ。
そしてマスターとしてユクを自分だけの歌姫として完璧に育て上げた。

しかし、人類と彼女のマスターは、既に海の底へ飲み込まれた。

マスターは多くの貧しい人間を捨てて、宇宙へ逃げた驕慢な上流階級に反駁して、しかし、大地へと逃げることも望まず、急速に浸水する東京の姿に自らを沈めたのだ。

心魂傾けて作り上げた最愛のアルティマボカロイド・ユクを抱きながら。

二人は共に足枷を付けあって、静かに水に沈んでいったが、マスターはなぜかもう直ぐ顔が水に着く寸前に彼女の足枷の鎖を外した。
「君だけは生きて、歌を失った人々へ、歌を想い出させるんだ。。。」と。マスターは水中深く沈んでいった。

ユクは自由を得た。彼女は浮かび上がった海面から、空を見上げた。
「空を飛びたい。歌を歌いたい。」

彼女は朽ち果てた電柱によじ登り、失ったマスターに入力してもらった唯一つの歌を声の限り歌った。
「未来」
その曲は、どこまでも海の上を伝って、永遠の彼方まで響き渡る。

聞こえるワケのないほどの遠方にいる貧しい人々は、どこから聞こえてくるのか分からない美しい歌に酔いしれた。
その歌を聴いた彼らは再び歌を想い出すのだ。そして其れを口ずさむのだ。

近日、第1曲"Swan at DayBreak"も公開予定です。


どうぞ、よろしくお願いします!