楽劇「トリスタンとイゾルデ」より第1幕への前奏曲と第3幕第3場終曲「イゾルデの愛の死」

死んで結ばれる永遠の愛への憧れは船が運ぶのだ

この曲を境に後期ロマン派が始まったといっても過言ではない。ワーグナーが開いた解決しない和声・無調音楽への扉。これ以降の古今東西の作曲家はこの曲の甘く官能的で恍惚たる破壊的魔力にとらわれて、古典的な規範から逸脱し発散してゆくのだ。
恐ろしい音楽。
トリスタンとイゾルデ

この中世のアイルランドを舞台にした物語は、船が重要な役割を果たす。楽劇は船に乗ってコーンウォールへ向かうイゾルデの独り言より始まり、最後では瀕死のトリスタンに出会うためにイゾルデが駆けつけるシーンで用いられる。
物語は船で持ち込まれ、船で終わりの彼岸へ渡される。
この前奏曲はまさにその冒頭のシーンへの音楽であり、「愛の死」は最後のイゾルデの絶唱である。
無限旋律の織りなす幽玄で深い夜の闇とそこで培われる禁断の愛、そして死ぬことでしかなしえないその愛の成就、悲しみを乗り越えてしまう死への憧憬。
ワーグナーという人間・芸術家は悪魔だと想う。


まずはフルトヴェングラーの定番をば。
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名演なり。というか全編聴いたVTRはこれしかないけど。

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