「おわりのない朝」1945.8.6〓被爆ピアノのために

デジタル時代では作り得ない音風景がここにあるぞ!

三善晃の「響紋」も一種のコラージュだと思うのだが、音風景を描く点で極めて興味深く、また同じようにコラージュで成功している例がこの「おわりのない朝」だった。共に83’の作品であり、某国営放送FMで同時に放送された。
「被爆ピアノ」とは、広島に8月6日投下された原爆により損傷したピアノのこと。通常の音楽とは違いテープ録音された作品で再演されることは望むべくもない特異な「音楽」?
実は興味深いのだが、ネット上で調べる限り現存する被爆ピアノは案外沢山あって少なくも7台くらいは有るようだ。広島平和資料館に3台、長崎市に1台、調律士矢川氏の元に2台、河本氏(故人)に1台、矢川氏は他にもう1台持っていたが何とこの5月に運搬中のトラックが無人のうちに自走始めてしまいバックで川の土手から落ちたそうで大破、廃棄処分されている。
万博で演奏された被爆ピアノは矢川氏のもの。というか、ぐぐってみれば氏のヒットばかり。批判をおそれずに言うが、これってビジネスじゃないだろうなぁっ!
と勘ぐってみたり。
閑話休題、さて、「おわりのない朝」は広島の朝の風景を本物の当時の録音テープから「雑踏」「電車」「ぽんぽん船」「B29の爆音」「警報サイレン」などを電子音・ノイズの録音とともにコラージュ、米軍の原爆投下への命令書が英文のまま読み上げられ「ヒロシマ」を繰り返すうち爆音と共に時計の秒針音がクレッシェンド。その緊張が極度に高まって遂に「人の声を変調した」恐怖の音が原爆爆発の瞬間に放たれる!
即、管弦楽のトーンクラスターによる黒い靄のような音響の中、被爆ピアノのシタールのように妙に倍音を含む独特のエレジーが始まり、管弦楽と共に崩壊した広島の風景を描く。そして、黒い雨を思わせる湿った空気の音響と被爆ピアノのぽつぽつたるアルペジオ、休止の間、やがて祈り悲しむシンプルで美しい被爆ピアノのエレジーが一通り奏でられると遠くから鐘の音が響いてくる。
突如、歪んだ被爆ピアノの音ではなく、現代のスタンウェーが明るいフレーズを奏で、平和への祈りを込めた美しい響きが静かに消えて幕が降ります。
この余韻で恍惚。。。黙祷。

ここでご紹介するCDは現代音楽を精力的に出している専門レーベル。
コンサートでは2度と再現できないテープ作品。
当時のコンテンポラリーミュージックを垣間見られるます。

Vienna Modern Masters in USA
"MUSIC FROM SIX CONTINENTS"1992 Series
TOSHIYA SUKEGAWA
"the eternal morning 1945.8.6"
Hiroshima Symphony Orchstra,Hideomi Kurosawa
Piano:Gen-ichiro Murakami
VMM3006

http://www.xs4all.nl/~gdv/vmm/