「対訳テニスン詩集」イギリス詩人選(5)

ここには退廃は無くただ熱き詩情があるのみ

テニスンの和訳本ってあまり無くて「イノアックアーデン」と「インメモリアム」くらいしか他に出ていない中で、本書の存在は大変嬉しい。一昨年の春にこれを発見したときは飛び上がって喜んで手にとったっけ。
さて、内容は、テニスンの創作年代順にその時々の主要な作品を網羅しており、全てに原文と対訳をつけてあるので、テニスン独特の韻律やテンポ、言い回しを楽しむことが可能で、本当に良書中の良書だ。また海洋国の詩人らしく海や船の内容を多く含み、「Break,break,break」とか「The Splendour Falls」、「From Maud XVII」などはfismajarお薦めの作品。
そうそう「HMSユリシーズ」(女王陛下のユリシーズ号)の巻頭句で「友よ来たれ〓」とありますが、これの原文がまさに「Ulysses」の最後の部分*1で原文と対訳が一緒でもう感涙でっす。また、「HMSユリシーズ」の村上博基氏の訳とも併せて対比させるとこれも興味深いです。

訳者の西前美巳氏は他にも現在手に入るテニスン本の著訳がある。
対訳テニスン詩集―イギリス詩人選〈5〉 (岩波文庫)

対訳テニスン詩集―イギリス詩人選〈5〉 (岩波文庫)

*1:P107cf