交響曲第7番「夜の歌」

近代管弦楽法による音響の「おもちゃ箱」

さんでマーラー聴いてみるかと開いてみれば、おっと「ギーレン/南西ドイツ放送響」のマーラーの7番を発見。なにげにライブラリー参加のレーベルが増え続けていてなかなか飽きさせないのはGJ!
で、この交響曲は恐らく一番人気がないマーラーのシンフォニーであろう。そのためかCDも演奏もなかなか頷けさせるものがないようだ。
fismajar的にも一番遅れて理解・好きになった曲で、ポケットスコアとエアチェックテープと首っ引きで漸くその面白さに気づいた。とにかく、複雑怪奇な名曲だと思う。
今回はギーレンのCDで気が付いたことを2,3書き連ねてみよう。
まず1楽章は「湖面をボートで一漕ぎしたら生まれたフレーズ」が静かに押し出すように響く中、テナーホルンが嘆くように跳躍の大きなパッセージを歌い出す。ここで小節後半の32分音符の連打(譜面では2分音符に3本斜線の同音反復で表現されている)は、普通の演奏だと靄がかったように聞こえる*1のだが、ギーレンはしっかり32分音符として刻んでいる。これが「ギコギコギコギコ」と不気味な音でなかなか恍惚。
これ正解ではないのか?
次にすべての楽章で言えるが、強弱変化や極端なアーティキュレーションの指示をきちんと再現していて楽器間にパースペクティブを生んでいる点。録音もカナリいじっているのかもしれないが、今まで見逃していた重要な響きをスコアと比べて発見できた。例えば、1楽章では256小節からの展開部(中間部)では比較的和らぎのある平坦な音風景なのだけど316小節のハープのグリッサンドを皮切に楽器を減らしてffにして周囲の音群はPPPで奥行きを作ったりするような工夫が綺麗に透けて見えているのだ。これが全楽章で行われるのでマーラーのオーケストレーションの凄さを本当に良く感じ取らせてくれる。
1楽章、5楽章は力業が多く相当オケに負担が多いと思うのだが、レコーディングだからか全然勢いが衰えずに最後まで鳴らし切るのもスゴイ。
個人的に好きな3楽章はよく平凡であるとされるが、この演奏を聴く限りブルレスケの王道を行く中にもいきなりムチの一打ちで全曲がストップしたり、もこもこもこもことあちこちにモグラたたきゲームのように出ては消え出ては消えの不思議な音響があったりして極めて面白いし、優雅な4楽章は異国情緒のセレナーデを満喫できて、まるで夜更け遠くでにぎやかに聞こえる祭り囃子を対岸の川縁で恋人と囁きを交わしながらマンドリンを奏でるような雰囲気で恍惚。
異論は在るだろうけど、7番のオーケストレーションとか音楽構成は8番を飛ばしてダイレクトに大地の歌、9番、10番へつながっているような気がしてならない。大地の歌、9番が8番から受け継いだのは、「ewig」とい言葉に潜むアトマスフィアーだったのではないだろうか。

ギーレンのマーラーの中ではこれは一番だと思うな。
マーラーの7番としても。

*1:普通の解釈ではブルックナーの霧のような響き