童声合唱とオーケストラのための「響紋」

そのイマジネーションで悲しみに"奮える"のだ!

私の宝物にこの「響紋」のスコアがある。
60段!
ところが大変空隙の多いスコアで,この空間が「響紋」を聞いたときに感じる痛烈な「虚無」を表しているのだ。そして、強烈な三善らしいオーケストラの咆哮と圧倒的なコントラストを生む。
四分音符50で始まる「かごめかごめ」の児童合唱。なぜかマーラーの3番5楽章を思い出す。曲調は全然違うのだけどいわゆるアンファンタンな子供たちの声と単純な「ビン・バン」という繰り返しが、「かごめかごめ」と対照的に同じ「虚無」を感じさせるのだ。
ワンセンテンス「かごめかごめ」が歌われると突如弦楽のトーンクラスターでグジャグジャなサウンドが入り込み巨大な破壊的音響の伽藍を築いてゆく。ふたたび「かごめかごめ」は歪んだサウンドとともに進んで時に螺旋状に絡み時に虚空に響き、そして後半「そこぬいてたもれ〓」を限りなく天国的で透明・純な児童合唱が繰り返して荒れ狂う管弦楽音響の中、歌い上り詰めてゆく。ついにオーケストラはfffff4分音符の大きな刻みで咆哮し、そして尽き果てる。。。
最後は、間延びして時間が止まったような弦のオルガプンクトの上、子供たちの「後ろの少年だぁれ。。」だけがシンプルな形で歌われると魂が抜けてゆくようにビブラフォンとピッコロ、ティンパニ,「鈴」が断片的に鳴り響き、消えてゆく。。恐怖の「恍惚」
三善のレクイエム三部作として、また日本の音楽史に残る金字塔として悲しくも誇るべき作品ではないか。

秋山の雄大無比な指揮とN響のパーフェクトな演奏、東京放送児童合唱団の素晴らしい心のこもった合唱!
是非聞いて、ともに悲しみに心を「奮わせて」ください。