ブルックナー 交響曲第6番

一度聴くと忘れられない

傑作の誉れ高い7,8,9への過渡的作品とされてなぜ〜か日の当たることが少ないようにも見える6番。
いや、全然他の番号に比較しても引けを取らないどころか、聴かせどころいっぱいの美しいそして雄々しい作品。
作曲者の生前に演奏されずそのためもあって、悪名極まる改訂がなされず生のままの作曲者の姿が拝める点でもブルックナー作品の中でも希有なものとも言える。
作曲は1879年から始まり1881年9月3日に完成している。その2年後1883年2月11日にW.ヤーン指揮ウィーンフィルにて2,3楽章のみ演奏されたが*1、そして1899年2月26日マーラー指揮ウィーンフィルで短縮版の全曲演奏が行われた。*2結局オリジナルのままの演奏は作曲者が死んで6年後の1901年3月14日に行われまで、闇の中。その間に7,8番の成功が在ったわけで、この曲が比較的ポピュラリティーが低いのは、その辺の事情も手伝っているのだろう。
しかしながら、繰り返すけど素晴らしい曲でもっと好きなる人があっても良いですね。。
そ、田園ぽいとか田舎っぽいとか妙な評価があるけど、何処をどう聞けばそう言う評価になるのかわたしゃ理解できん。全体に引き締まっていて冗漫なところがないと想うし、9番くらいの構成の妙が感じられるけど。和声も対位法も後半交響曲と肩を並べられる進化を感じますし。曲想?いや、ブルックナーにあって曲想が何か標題性を持っているなんて私には感じることが出来ないんです。どの曲も『「神との対話」をするブルックナーおじさんの音楽』*3にしか聞こえないのは、問題ですか、そうですか(w

1楽章は、マエソトーソを謳っていて「タッタタタタ〜」という緊張感溢れるリズムを刻むヴァイオリンに低弦軍が堂々とした第1主題を引きずるように歌い出す。この第1主題は2つの動機で構成されていて低弦の3連符を含む動機に対し木管の応答を含む付点の第2動機とワンセットとなっている。これを2回目ではトゥッティで堂々と輝かしく鳴らすところは、「恍惚」なり。50小節まできてようやく第2主題。譜面面では7段くらいしかないのだが伸びやかな旋律を芯に対位法を駆使した大変複雑なものでこれも後半に三連符の音階インターバル動機をともなって終熄する仕掛けで、良く聞くとトリスタン主題のようなものを含んでいて大変ロマンティック。これが終わるとネジをまるで巻き直すような経過部になり*4展開部へ。各主題は非常に明快で劇的な展開を見せるけど見通しが悪くなることはない。心躍る。そして再び経過部を経て短い再現部、そして大変劇的でカッコイイ、コーダ!ジャン♪この終わりはブルックナーの中では白眉なり!!

2楽章がこれまた恍惚のアダージョ。たゆたう旋律はとても情熱的で神様との対話をしている作曲者がハッキリと見える「見える!見えるぞ!(<ブルクッナーおじさん談)」最初の弦の主題についての変奏形式であるが、例えば5小節目のオーボエ主題はすでに第1主題の変奏だしその後現れる原初の主題以外も小さく纏めた変奏であり、まるでフラクタルのように一つの主題にその主題の小さな形を含めて見せて大変興味深く、音楽自体も奥行きのある敬虔な祈りに充ち満ちている。特に最後尾110小節からの60小節は、もう「恍惚」。ブルックナーの凄さを見せる。本当に凄い美しさ。。。

3楽章は、踊りにくいスケルツォ。単純な3部形式でトリオの可愛らしさは、萌えw。この明快さがこういう大交響曲のなかにあるのも、素晴らしい!金管の鳴りがお楽しみの楽章。

4楽章は低いブルックナー開始を短く伴った1楽章の第2主題もしくは第2楽章の主題に似ているパッセージで導入後、下降するスリリングな第1主題で格好良く始まる。*5この第1主題もいくつかの動機を含んでいて特に上下運動する主題は、全体を通じて伴奏に変じたりする万華鏡的なもの。ブルックナー全休止を経て第2主題が歌われるここも複雑なテキスチャで面白い。この楽章も1楽章と同じようにいくつもの断片動機を内在する第1主題、第2主題を分解・再構成を繰り返し繰り返し、ソナタ形式として伽藍を築いてゆく。次の7番交響曲を導かんとするシチュエーションも有り400小節を超える全曲を長く感じさせない魅力ある楽章だと想う。下降する動機のスリリングさは、他の曲には無い面白さだとオモワレ!
最後のコーダでは第1楽章の第1主題を高らかに鳴らして雄大に終わる。

ヨッフムの指揮は名演の誉れ高い!バイエルン放送響って好きなオケなんだな♪
輝かしく雄渾な6番なり!

ブルックナー:交響曲第6番

ブルックナー:交響曲第6番

*1:長すぎるからとわいへ、中途半端な選曲、盛り上がらないぞこれじゃ

*2:評価はどうだったのだろ?

*3:田舎っぽいと言うことを言ったら全部そう聞こえるけど

*4:第3主題とするらしいけど、主題としての自立性に乏しくわたしゃこれは第1主題と第2主題の合成による場面展開用の一時的主題と思う。非常に目立つのでそうしたくなるのは分かるが他の主題に比べて時間的に非常に短いし

*5:ところでこの曲は「Bewegt,doch nicht zu schnell(動きを持って。しかし速すぎないように)」となっているのみで速度標語が無いけど、アレグロくらいのものなのかな