ピアノ5重奏曲 第2番

これを聴くとドラマティックな恋をしたくなる?!

フォーレが1921年76才に完成したこの曲、もはや聴力の異常で正確な音程を聞き分けることができなかったため陰の方で身を潜めていた作曲者は演奏が終わると大喝采のなかで一人進み出て唯うなずくのみであったそうだ。彼の目に映る熱狂した聴衆は、現実の音のする我が曲を美しく聴くことのできぬ彼の孤独な寂しさを感じることができたろうか?
そしてフォーレは、どこに満足を置いていたのだろう?自分で確認できない「作品」、もはや音譜を読むことでしか感じ得ない「作品」。それでも彼は、自宅に戻って家族にこう漏らした。「確かに今晩は楽しかった!厄介なのは今後も再び落ちないようにもっと良い仕事をしなければならないことだ。」勝ってなお兜の緒を締める、心したいものだ。
と、かっこよく切り出しちゃいましたが、確かにこれはフォーレの傑作中の傑作!颯爽とアレグロモデラートで断固たるピアノの5度に及ぶアルペジオにのせて息が長く力強く優雅な主題が天空を上るような想いを熱く熱く歌い上げてゆくこれだけで、恍惚!緊迫感あふれる硬派ソナタ形式で完成度の高さが際立ちます。2楽章は軽やかで草原を駆け抜けてゆく風のようです。3楽章はアダージョ。美しくも瞑想的な音楽。優しい心持ちにさせてくれます。フィナーレは、1楽章と双璧をなすロンドソナタ形式の音楽でアレグロで軽やかさと華やかさでとても76歳の老年の作曲と思えない若々しくも極めて完成度の高い音楽、かなり短い?(無いのかな?)再現部から終わりに向けてもう歓喜に満ちたフィナーレで大満足!

録音は古いけど、これが定番でしょう!

フォーレ:室内楽全集(1)

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