一人の少女の死に捧げられたレクイエム?。。。。
例のオペラ「ルル」を仕上げつつあった頃、ヴァイオリニスト ルイス・クラスナーからヴァイオリン協奏曲の依頼を受けて作曲。1935年冬2月の話、折しもナチスが台頭、第2次世界大戦への暗い影がヨーロッパを覆いつつある頃である。*1
タイトルの「ある天使〜」とはアルマ・マーラー(=ヴェルフェル)とグロピウスの間にもうけられた少女マノン*2のことで、美しく可愛らしいマノンをベルクは大変かわいがっていたが、17歳*3で脊髄小児麻痺を引き金として何らかの病により死んでしまう。これに衝撃を受けたベルクは「ルル」*4を放置、異例な速さで8月にこのヴァイオリン協奏曲を完成してしまう。ところが今度は1935年12月24日(今年は没後70年である)に50歳で作曲者が死んだことにより奇しくも自分自身のレクイエムとなってしまうのだ。
ところで、この曲はマノンを描くレクイエムとして表向き作曲されているが、多くの研究により実は、この曲に秘められている女性は3人いることが指摘されている。そしてそれがベルクの幼児期におけるトラウマによるものだったり、生・死・浄化をあらわすモノであったり、いくつものカラクリが秘められている。詳しくは、いくつものベルクの研究文献を当たって頂きたく。
ヴァイオリン協奏曲 (ベルク) - Wikipedia
さて、曲はのっけから空辣な響きの十二音階の様式による2楽章形式であるが、諸井誠によれば2部4楽章と細分できるようだ。一部は、1楽章「アンダンテ」2楽章「アレグレット」2部は3楽章「アレグロ」4楽章「アダージョ」と別けられるとされるが、コレに則って解説を試みるなら、1楽章は4つの3和音を重ねてこれがフィナーレへと一つのつながりを描く。ここでは、少女の面影を描くように穏やかな曲想で恍惚、2楽章ではレントラー風の少女の花園で踊り遊ぶ姿を感じる。*53楽章は、少女の病の苦しみへの葛藤の想いが、そしてフィナーレはバッハのカンカータ第60番「永遠よ、汝恐ろしき言葉よ」から終末合唱「十分です。。。」が奏でられ誠に清らかな浄化を感じさせて、恍惚。。。
悲しみと複雑な心情が幻影のように遠くに翳みあたかもそこには純化された音のみ存在するように作られたようなガラス細工の音楽。誠に奥ゆかしい美しい曲。涙。。。
ブーレーズ・ロンドン響の冴えた演奏とズーカーマンの清らかな演奏がえ〜 アルバムタイトルの「浄められた夜」、「叙情組曲」も良いです〜
- アーティスト: ニューヨーク・フィルハーモニック,シェーンベルク,ベルク,ブーレーズ(ピエール),ロンドン交響楽団,ズーカーマン(ピンカス)
- 出版社/メーカー: ソニーレコード
- 発売日: 1996/10/21
- メディア: CD
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