楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲

高揚感の極限的恍惚だわさ

おはつのワーグナー。一番好きなのは「トリスタンとイゾルデ」なのだが今日は次いで好きなこいつをとりあげるのだ。
ご存じの通り第三帝国のテーマソングみたいになっちゃたけど、どうということはないドイツのナショナリズムということで戦勝国の「あ」とか「そ」とか「い」とかそんな曲は枚挙にいとまがないほど有るわけで、当事者の暗い想い出については否定しないが、そこだけをとって冷静な評価ができないのはいかがなものかと思うのだわさ。
現代までの音楽宇宙の特異点となった前作「トリスタン。。」で人間の情念の究極的音楽表現を果たしたワーグナーだが、この作品では、「愛の死」という言葉で代弁できる非常に抽象的なアトマスフィアが突出していて、逆にその半音階的表現や無限旋律へ逃げてしまった部分が有る気がするのも否めないのではないかな。しかし、「マイスタージンガー」はその点もっと技術的に情念的にも大変冷静に作られていて、堂々たる調性音楽の法則する世界に自由に飛翔する半音階、無限旋律などがまるで星空のように美しい宇宙的パノラマを感じさせてくれている。
このあと楽匠は巨大な「指輪」を作り上げ精神的昇華である「パルジファル」へと向かうが、そこは既に完成された自分の楽劇に対してのチャレンジであって実験作品として「マイスター」よりも有る意味未完成な部分を感じてしまう。
わらしは、この「マイスタージンガー」こそワーグナーのもっとも完璧な作品だと言い切っちゃうのだ。
で、この曲にて付いての解説はいっぱいあるのでググって見てくだされ。ここで書くのは、ただ「ワーグナーの頂点はマイスタージンガーであり、そのもっとも簡単で偉大な要約がこの前奏曲である」ということだけ。

だいたい、C-durって凄くない?
なかなか使えないんだよ、この調は!

これはすごいとおもう。
タンホイザー~ワーグナー管弦楽曲集

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